トップページ>ライターになるために!>編集者には刺激を与えてもらいたいです。
最相葉月 / ノンフィクションライター ③
2009 / 12 / 02
最相さんがこれまで、作品を書き続けられたのは編集者の存在がとても大きかったそうです。今回は、編集者としての経験もある最相さんに理想の「編集者像」を伺いました。
―最相さんは、ノンフィクション大賞受賞後も、作品を書き続けられていますが書き続ける秘訣というか、心がけていることはありますか?
秘訣は特にないですよ。
結果として書き続けることができただけで、その場その場は必死ですから。
それより一番大切なのは、わたしの仕事を支えてくれている編集者の人たちがいるということですね。
編集者がいなければ、今のわたしはいないですし、もちろん本も出版されていません。
どんなによい企画でも、それを進めることは出来ませんでしたから。
今はデジタルの時代で、編集者がいなくても記事を公にできるようになったとはいえ編集者の目が通っているものと、そうでないものとでは、全然違いますからね。
やっぱり、最初の読者として、そばにいて伴走してくれる人たちがいるということ出版社には編集者だけではなく、校閲、販売、宣伝、版権などさまざまなかたちで書き手を助けてくださる方々がいます。
そして、その先に書店の方々と、読者がいる。
周りで支えてくださっている人たちの期待にちゃんと応えていきたいこの思いが、これまで書き続けられた大きな要因ですね。
―最相さんが仕事をしやすい、やりたいと思わせる「編集者像」は何ですか?
やっぱり仕事をしてくださるには、わたしの作品を読んで理解してくださっているということが、最低条件ですね。
それだけでなく、こんなおもしろいテーマがありますよ。とディスカッションをしていく中で、刺激をくれる人がいいです。
その刺激は、取材するテーマに限らず映画や音楽や演劇、それ以外にも目にした記事、耳にしたことなど色々な事に対してアンテナを広げているということですね。
わたしは、テーマを決めて取材や執筆をしていると、集中しすぎて情報をシャットアウトしてしまうことがあるんですよ。
そういう時に、編集者に揺さぶってほしいです。
あとは編集者自身も常にレベルアップするように、努力している人と仕事をしたいと思っています。
時代の大きな転換期だからこそ、お互い向上心を持って仕事に取り組みたいです。
―今は、最後まで会わなくても仕事は出来てしまいますからね。
メールで依頼がきてメールで原稿を渡す時代ですからね。
一年間連載して、一度も会わなかった編集者もいます。
本当はそういうことはあってはならない。
自分から会いにいくべきだったと反省しています。
―編集者としても、不況の世の中で、出版点数を増やしていかなければいかず、一人の編集者への仕事量は増えていく。といった悪循環になっているんでしょうか。
それが執筆者と会わない理由になるのでしょうか。
古い出版社であれば、どんなに若い編集者でも最初の依頼は、手紙できますね。
その上で初めてお目にかかります。
上の方からきちんと伝授されているというか、伝統があるのを感じます。
でも、そういった伝統があるからといって安泰ともいえない時代になっています。
新しい出版社の中には、老舗出版社の方よりも努力している編集者がいます。
『ビヨンド・エジソン』を担当してくれた若い編集者も、
見本が出た時にあちこち書店回りをしてくれました。
『絶対音感』が出版された時は、刊行される前の告知段階ですでに反響があったので
販売担当者と編集者が本を抱えて書店営業をしてくれましたけど。
本当に10年ぶりくらいにそんな姿を目の当たりにして、感動しました。
―最相さん自身、これまでに編集者として働かれている時代があるからこその視点ですね。
えぇ、そうかもしれません。
プロフィール
1963年生まれ。関西学院大学法学部卒業。
会社勤務、フリー編集者を経てノンフィクションライターに。
スポーツや音楽、教育、科学技術と人間の関係性をテーマに取材活動を行う。
主な著作に、『絶対音感』『青いバラ』
『東京大学応援部物語』『いのち 生命科学に言葉はあるか』
『星新一一〇〇一話をつくった人』など。
近刊に『ビヨンド・エジソン』がある。
最相葉月さん最新刊
『ビヨンド・エジソン 12人の博士が見つめる未来』
ポプラ社刊 定価:1,575円(1,500円)
詳しくはこちらをご覧ください。
神戸で、最相さんのトークイベントが開かれます!
日時:12月4日(金)19時~
場所:ダイエー三宮駅前店9階 セキ珈琲館
タイトル:
私のノンフィクション作法
『ビヨンド・エジソン』刊行記念
前売チケット:1000円(ワンドリンク付き)
問い合わせ:078-252-0777(ジュンク堂書店三宮駅前店)