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ライターになるために!

 

有名な方でも、きちんとプロセスを踏めば、取材を受けてもらえます。

最相葉月 / ノンフィクションライター ②

 

競輪王だった高原永伍選手の本を出版された後、2作目の『絶対音感』は、本が出版されるという確約が、一切ない状態でありながら、著名な音楽家を含む100名以上の人に取材をされたそうです。
今回その取材を受けてもらう秘訣を『絶対音感』を書くまでの経緯とともに、お話いただきました。

フリーライターの仕事手帖:最相葉月/ノンフィクションライター②

有名な方でも、きちんとプロセスを踏めば、取材を、受けてもらえます。

―徳間書店から第一作を出版された後は、何をされていたのですか?

その本をたまたま読まれた小学館の方から「21世紀国際ノンフィクション大賞」(現・小学館ノンフィクション大賞)という賞があるのですが、応募してみませんか?
と声をかけていただいて、それに取り組もうとしていました。

そこで応募したからといって、優遇されるわけではまったくありませんし、大きなリスクもあるといわれましたが、幅広く作品を集めるために、いろんなライターに応募を呼びかけていたようです。

―テーマはすぐに見つかりましたか?

それが、難しいんですよ。
競輪の世界で一番大きいテーマはすでに書いてしまったと思いこんでいたので。

ただそのとき、橋本聖子選手や神山雄一郎選手、吉岡稔真選手といった一流の日本人選手も参加する世界自転車選手権大会がコロンビアで開催されるので、ちょうど競輪のオリンピック正式種目化が話題になっていたこともあって、それをテーマにしようと、現地取材をしました。

そのコロンビアからの帰り、トランジットでシアトルの空港にいたときにドジャースの野茂英雄選手の投球シーンが売店のテレビで上映されているのを見て「今回のテーマでは書けない」と、気づいてしまったんですよね。

―なぜですか?

ちょうど、阪神淡路大震災が起こった年で、何もできないながらも地元の神戸に戻るかどうかを考えて悩んでいた時期だったんですね。

野茂選手とは住んでいる町も近く同世代ということもあり、すごく身近に感じていました。

そんな選手が退路を断って渡米し、大リーグの第一線で活躍している。
わたしも、
「最後の最後のチャンスだと思って、勝負しなきゃいけない」
と、気づかされたんです。

応募を勧めてくれた方には「今回の応募は、断念します」と、連絡をいれました。

―その後、すぐに「絶対音感」というテーマをみつけたのですか?

「絶対音感」という言葉に出会ったのは、翌年ですね。
知人達の会食の席で、その言葉を初めて聞いたんです。

人間の感覚はきわめて相対的なものなのにどうして「絶対」なのか。
しかも、それがある種天才的な意味を持って扱われているじゃないですか。

それは「何でだろう」「おかしいな」と思って。
高原選手をテーマに書こうとした時と同じ感覚ですね。

で、気になって調べていくうちに、これはテーマになると感じて、取材を始めたんです。

一度はノンフィクション大賞への応募を、あきらめましたが、せっかく賞の存在を知ることができたので、そこに応募しようと。

その賞で、箸にも棒にもかからなければ、神戸に帰ろうと思っていました。

―取材中は、賞への応募は決めていたものの取材したものが形になるのか明確になっていませんでしたよね。
それでも取材相手に、すんなり受け入れてもらえましたか?

ケースバイケースでしたね。
断られたときに不愉快な思いをしたこともあります。
でも結果的に、取材を受けていただけたのは、本当に素晴らしい方々ばかりでしたね。

人として常識的にアプローチをしたときにそれに対してどう対応されるかで、人間性が見えてくることもあるんですね。

マネージャーの方々におもしろい企画だと思っていただけたことも、取材を受けていただけた要因じゃないでしょうか。

たとえば、矢野顕子さんのマネージャーさん。他には、指揮者の佐渡裕さんやヴァイオリニストの五嶋みどりさんが所属していた音楽事務所の社長さんです。

矢野さんは、ニューヨーク在住なので、電話で取材させていただいて、佐渡さんには、帰国されたときに1時間近くお話しを伺うことができました。

どんなに有名な方でも、取材依頼の手紙をお送りした結果、相手がその企画に賛同しおもしろいと思ってくだされば、成立するんですよ。
どなたにも謝礼は一切お支払いしていません。

―苦心の結果、大賞を受賞されて、感慨もひとしおだったのではないですか

それももちろんですが、結果的に本になってほっとしました。
取材を受けてくださった方々への恩返しにもなりました。

『絶対音感』は、そのようにしてうまれたんです。
わたしにとって、これは本当に大事な作品です。


(続きます) 次回は12月2日更新予定


プロフィール

1963年生まれ。関西学院大学法学部卒業。
会社勤務、フリー編集者を経てノンフィクションライターに。
スポーツや音楽、教育、科学技術と人間の関係性をテーマに取材活動を行う。
主な著作に、『絶対音感』『青いバラ』
『東京大学応援部物語』『いのち 生命科学に言葉はあるか』
『星新一一〇〇一話をつくった人』など。
近刊に『ビヨンド・エジソン』がある。

最相葉月さん最新刊

最相さんの最新刊『ビヨンド・エジソン』 『ビヨンド・エジソン 12人の博士が見つめる未来』
ポプラ社刊 定価:1,575円(1,500円)
詳しくはこちらをご覧ください。


神戸で、最相さんのトークイベントが開かれます!

日時:12月4日(金)19時~
場所:ダイエー三宮駅前店9階 セキ珈琲館
タイトル:
私のノンフィクション作法
『ビヨンド・エジソン』刊行記念
前売チケット:1000円(ワンドリンク付き)
問い合わせ:078-252-0777(ジュンク堂書店三宮駅前店)

http://www.junkudo.co.jp/event2.html

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