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編集者になるために!

 

第9回 :絞りの効果で被写界深度を生かした1枚を

 

シャッタースピードの役割は光の量と動く被写体の写し出し方のコントロールでした。今回のテーマである絞りにも2つの役割があります。1つ目はシャッタースピードと同様に光の量の調整、2つ目はピントが合う範囲のコントロールです。このピントが合う範囲のことを被写界深度と言います。被写界深度は絞り値(F値)、レンズの焦点距離、撮影距離(被写体とカメラの間の距離)で決まります。では、実際の写真を見ながら順を追って説明しましょう。


ぼかしを生かす

針子 .jpg

【刺し子:F4】ピントが合っている針先以外は、やわらかにボケている。

※刺し子とは、手芸の一分野で、布地に糸で幾何学模様等の図柄を刺繍して縫いこむこと。


 山形県庄内地方に伝わる刺し子。一針一針、木綿の布地に幾何学模様を施します。この写真は、ヱビスビールのウェブサイトで「鉄道の旅×ヱビスビール」をテーマに羽越本線沿線を紹介したときの1枚です。どこにピントが合っているかわかりますか? カメラは針にフォーカスしています。周辺をぼかすことで、写真を見る人の視線を針の一点に誘導しているのです。カメラのフォーカスと、写真を見る人の目線、そして縫い手の意識が針先に重なります。伝えたい部分を1点に絞った写真です。

 このように、ピントの範囲を調整しているのが絞りです。絞りを開けばピントが合う範囲は狭く、ピントが合ったポイントの前後はボケて写ります。この写真は50mmの望遠レンズでF4の絞りで撮影したものです。

※35mmフィルム換算100mm相当


すべてにピントが合うように撮る=パーンフォーカス

イカ.jpg

【日干しのイカ:F11】手前から奥、隅々までピントが合っている。

 日本海沿岸で日干しにされるイカも、同じくヱビスビールのウェブサイト用に撮影した写真です。夏の青い空を飛ぶようなイカの群れと、その影が画面一杯に広がるようにくっきりと写し撮りました。
 手前のイカから奥のイカまで、すべてにピントが合っているでしょう? ちなみに、このような撮影技法をパーンフォーカス(pan-focus)と言います。これは7mmの広角レンズでF11の絞りで撮影したものです。

※35mmフィルム換算14mm相当


 改めて2枚の写真の絞りを比較してみましょう。刺し子の絞りはF4、空飛ぶイカはF11。絞り値がF4からF11と大きくなっています。刺し子は開放気味の絞り値でピントの合っている前後をぼかす効果を、イカのほうは隅々までピントを合わせることによって全体をハッキリ見せる効果を狙っています。
 このように、絞りを変えればピントの合う範囲(被写界深度)とボケの表現を操ることができます。さっそく伝えたいイメージを明確にして、適切な絞りを選ぶことから始めてみましょう。


(文・春日優子)




善本喜一郎氏 プロフィール

善本喜一郎(よしもと・きいちろう)編集者・ライターのための連載写真講座
1960年東京都生まれ
フォトスタジオKiPSY代表
社団法人日本広告写真家協会常務理事
自身が代表を務めるフォトスタジオKiPSYには多くの著名人がポートレイト写真を撮りに訪れる。
また、2008年より宣伝会議 編集・ライター養成講座の写真担当講師も務める。

善本さんのフォトスタジオ
KiPSY HP http://www.kipsy.jp


最近の仕事
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写真1:ヱビス「Y列車で行こう! Vol.4日光線・烏山線の旅」

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写真2:「120年記念 匠ヱビス」の秘密

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