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健全な懐疑精神を持て!

越川健一郎/毎日新聞『サンデー毎日』元編集長②

 

毎日新聞社会部記者、甲府支局長、『サンデー毎日』編集長などを歴任し、現在は毎日新聞東京センター代表取締役社長である越川健一郎さん。今回は、新聞記者を志したきっかけから、高校時代、恩師に教えられ新聞記者になってからも何度も思い返した言葉についてお話を伺いました。

編集者の視線:越川健一郎/毎日新聞社『サンデー毎日』元編集長②越川さんが、毎日新聞甲府支局長時代に、山梨版に2年半連載していたコラムをまとめた『甲州日記』

健全な懐疑精神を持て!


――越川さんが新聞記者を志したきっかけは何ですか?

最初から新聞記者になりたい、と強く思っていた訳ではなく、実は「消去法」なんです。
父のように警察官になって人を逮捕することだけはしたくない、母のように教壇に立って子どもたちを導く資格は自分にはない、カネ勘定も苦手だから金融関係の会社を訪問する気にもなれない、といったように職業を消していった結果なんです。
最終的に、いろいろな人間に会えるメディアの世界が残りました。
とはいえ、きっかけをあげるとするならば、高校時代の恩師との出会いですね。


――その恩師の言葉で、新聞記者になってから何度も思い返したものがあるそうですが、どんな言葉ですか?

高校に入学直後、倫理社会の先生に「健全な懐疑精神を持て!」と言われたんです。
世間の常識とされていること、一般的になっていることも本当に正しいのかと疑いなさい、と教えられました。
この先生は土曜の1限目から酒臭かった反骨的な人だったんですけどね。

これはメディアに携わる人間は、誤報を防ぐためにも、絶対に持たなければならない視点なんです。

1994年、松本サリン事件が起きましたが、その際にメディアも第一通報者であった河野義行さんを「犯人視」報道をしてしまいました。
メディアに何百人・何千人といる中で「違うかもしれない」と、疑うことをした人が多ければ、違う結果になったと思います。
この件を筆頭に、誤報に関してメディアも、堂々と自己反省をしなければならないと感じています。

また誤報については、こんなことも過去にありました。
締切に追われた新聞記者が、FAXで送られてきた交通死亡事故情報を、きちんと確認せずに記事として掲載したら、後日「わたし、生きています」と電話が掛かってきたそうです。
送られてきたFAXは、ライバル誌の仕業かどうかはわかりませんが、虚偽の情報だったんですよ。
つまり、何の事故にもあっていない一般の方を、死亡したとして報道してしまったんです。
送られてきたFAXに記載された警察署の部署名などは実在のものだったそうで、記者もつい信じてしまったんでしょうね。

今ではWebでの検索が当たり前になり、情報が氾濫しているからこそ「疑う力」は、より身につけなければならない素養だと感じています。


――こういったWebをはじめとする新しいメディアが増えている今の状況を、新聞という伝統的メディアで長年経験された越川さんはどう思われていますか。

メディア再編論が叫ばれていますが、たとえメディアが変わっても「健全な懐疑精神」を持つことが、とても大事だと思います。
最近、異業種からメディアの仕事に転職を希望する人多くいるそうですが、メディアには新しい風というか多様な見方が必要ですので、私は大歓迎です。

先ほどの誤報にも関わってきますが、単一なものの見方になってしまうことが一番怖いんですよ。
異業種から転職した人は、入社後すごく違和感を覚えると思うんです。
でもこの違和感がとても大事。
新聞社などにずっといると忘れてしまう、当たり前のことを気付かせてくれるのが、異業種からの転職者の方々なんです。
メディアに長年いると言いづらい「本音」をいうことが出来る人も、異業種からの転職者の中にはいると思っています。

それに、逡巡して何もしないより、自分のエネルギーを出し尽くして生きるべきです。
存在しているだけでは、この世に生を受けた意味がないですから。
全体的に生きる使命というか志を失っている人が、多くなってしまったような気がしています。

「今日が最後の日であるように生きていく」
こう考えていれば、後悔することなく過ごせるでしょうし、今とはまた違った世界が見えてくると思いますよ。

(続きます) 第3回はこちら

プロフィール

1954年千葉市生まれ。1978年毎日新聞入社。
甲府支局長、『サンデー毎日』編集長、東京本社代表室長、毎日新聞東京センター常務取締役を歴任し、2009年6月、毎日新聞東京センター代表取締役社長に就任。


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