トップページ>編集者になるために!>作家からみた、編集者という職業:第4回

編集者になるために!

 

作家からみた、編集者という職業:第4回

~小説家・雫井脩介~

 

 たとえば小説を出版しようとする場合、編集者はまず、作家をつかまえなければなりません。どれだけの作家をつかまえているかということが、編集者という職業では大きな意味を持ってきます。

 作家をつかまえるのは、その編集者が若手であるうちに頑張っておくべき仕事だと思います。また、若手のほうが何かと有利だとも思います。作家から見ても、あまりに業界ずれしたような雰囲気のある編集者よりは、まだ初々しさのある編集者のほうが、原稿にも新鮮な気持ちで接してくれそうな気がするものです。編集長クラスの人に依頼に来られても、いざ仕事をするとなると、調べものなど細かい仕事も気軽には頼みづらそうですし、ちょっと作家も構えてしまいがちです。

 おそらく編集者が自分の仕事人生を振り返ったとき、財産になっているのは、若手の頃に培った人脈ではないでしょうか。キャリアが十年を数えるまでは、どんどん作家に当たって、財産の芽を作っておくべきでしょう。若い頃に頑張って動いていれば、キャリアを積んだのちも、動ける編集者として、幅のある仕事ができると思います。

 編集者になったとき、まずはどんな作家に当たりに行けばいいのでしょうか。それはやはり、自分が愛読していた作家がいいと思います。多少、ファン目線でも構いません。その作家の作品が好きだという思いは、編集者にとっても一番の武器になります。

 ただ、活躍中の作家だと、すでに自分の社の先輩が担当についている場合が少なくありません。こういう場合、その担当と作家が長期間没交渉であるケースを除いて、勝手には アプローチできないのが普通のようです。おそらく、上司に伺いを立てる時点で、OKが出ないでしょう。残念ながら、あきらめるしかありません。

 しかし、上から割り振られた引き継ぎの担当をこなすばかりでは、仕事が広がりません。編集者としても受身の癖がついてしまい、小さくまとまってしまいがちになります。

 僕がお勧めしたいのは、デビューしたばかりの新人作家に目をつけるということです。新人作家はまだ海のものとも山のものともつかず、執筆を依頼するにはリスクがあるものですが、それだけに編集者としての感性が試される面白さもあります。デビュー作を読んでぴんと来たなら、それがそれほど話題になっていなくても、アプローチしてみるべきだと思います。運がよければ、伸び盛りの生きのいい原稿が手に入るかもしれません。

 現在、一般文芸書籍をコンスタントに出している出版社は、二十社強というところでしょうか。僕の例で言うと、今までに、小説の執筆依頼があったのは十五社ほどです。依頼があるのは嬉しいことなのですが、正直、そこまで増えると、自分のキャパシティーを明らかに超えているので、どの社にもいい顔をするということができません。

 しかし、デビュー作を出したとき、その時点でアプローチがあったのは、まだ二社でした。そのうちの一社は、文芸誌の新人賞発表号に受賞作品の冒頭部分が掲載されたのを見て、僕に会いに来てくれました。上司と一緒でしたが、彼もまだ初々しさの残る新人編集者でした。おそらく彼が何年かのキャリアを積んだあとだったなら、デビュー作の冒頭を読んだだけで依頼に来るなどということはしなかったと思います。

 けれど、その彼の大胆な依頼によって、吹けば飛ぶような新人作家の僕は、作家生活のスタートラインでやれそうな自信を持つことができました。そして、その後の自分の作品の多くを、その出版社から出すことになったのです。

雫井脩介氏 プロフィール

作家からみた、編集者という職業:小説家/雫井脩介④ 雫井脩介(しずくい・しゅうすけ)


1968年愛知県生まれ。2000年に第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』でデビュー。
04年の『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。
同作は「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝き、ミリオンセラーとなった。
他の著作に『虚貌』『火の粉』『白銀を踏み荒らせ』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『犯罪小説家』『殺気!』がある。

編集会議.comトップへ戻る

Backnumber

Backnumber一覧
 
 
Copyright (C) SENDENKAIGI Co.,Ltd. All Rights Reserved.