トップ » 出版社に入る! 編集者になりたいあなたへ » 第3回

Q3
週刊誌の命はネタ、だと思います。
ネタを集めるために、加藤さんが若手時代に実践してきたことは何でしょうか。
A3
たしかにそのとおり。
週刊誌の編集者のみならず、なべて編集者の命は、企画=ネタです。
週刊誌の編集部は、実践を通じて編集者を鍛え上げるのに、これ以上はない格好の現場ですが、ネタを集めるということでもこんな苛酷な現場はないでしょうね。なんせ、事件・特集の記事を現場に行って取材する、コンビを組む記者の方にディレクションを出す、はたまた取材のための資料を集める、その一方でコラムの原稿を作家の方からいただく、といったことを常に並行してやりながら、かつ、次週のプランを最低でも十本は企画会議にださなければならないのだから。よくもまあ、そんなことやっていたなと思います。
いちばん忙しい頃の僕の場合、作家の渡辺淳一さんのエッセイ、お笑いコラム(複数の作家、エッセイスト、ライターの方々の原稿からなる)などがまず連載としてあり、それに、硬派のルポライターである溝口敦さんの短期集中ノンフィクションを抱えていて(ここまでは毎週泣こうがわめこうがやらなくてはならない)、さらに、特集記事を一、二本担当していたように思います。そして、これにくわえてプランのための取材をしなければならないわけです。
いったいどうすればいいのか? 複数の先輩から教えられた、企画の秘訣は、「プランは考えるものではない。人から盗むものだ」ということ。
わかりますか?
つまり、人から話をきけ、ということなんです。自分の頭の中でうんうんうなっていても、たいしたアイディアがでるものではないし、だいいち、週刊誌の命である、ネタの鮮度というか、なまなましさがない。
ネタはなんでもいいんです。
たとえば、食品による健康被害の問題に興味があるとします。学者さん、研究家は、真剣に取り組んでいる方なら、当然一家言あるし、問題をわかりやすく解説してくれるので最初のあたり先として最適です。そしてその方が「ホンモノ」ならば、必ず研究のためフィールドワークしているわけだから、被害にあった一般市民とも親しいはず、被害の当事者になった方を紹介してくれるかもしれない。そうやって次々にネットワークを拡げていくと、人体に有毒な加工食品を流通させてしまったのに、そのことを隠蔽している企業の社員からそっとホントの話をきけるかもしれません。
つまり人が人を呼んでくれる
――編集者はそういう「辿り力(たどりりょく)」というか、ネタを引きよせる粘り強さが不可欠です。
ここでも大切なのは、人のフトコロ、心の中に入ることの出来る、人なつっこさです。
ネタ拾いで、僕が原則としているのは「北風と太陽」の寓話で言えば、太陽の方法論かも。つまり、むりやり旅人の外套をはぎ取るのではなく、こころを温めて、その人に心の外套を脱いでもらう。でも、なかには北風タイプが得意な人はもちろんいるし、どうしても北風のように強烈なあたりをしないと、ネタを拾えないこともあります。
いずれにせよ、若いうちはとにかく経験値を上げること。スポーツで上達するためには、体力があり肉体が柔らかく強靱なうちに、練習に練習を重ねて、身体に最良最速最適の動きを覚え込ませるように、編集者の技術も、若いうちの反復練習がなにより大切です。これをサボった人間は、年をとったあとがたいへんです。技術が身体に沁みていないからあっというまに、編集者としての力量を失います。
(加藤 晴之)
henshukaigi | 2009年2月13日 15:30
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